クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
「もう一度、俺と付き合ってほしいんだ」

 彼の言葉が耳を通り過ぎて、理解できない。空耳を疑うほどだった。冗談にしては面白くなさすぎる。

「ちょっと……ちょっと待って。亮らしくないよ。偶然の再会に感情的になってどうするの。しっかりして」

「勢いで言ってるわけじゃない。別れてからもずっと汐里を忘れられなかった」

 亮よりも私の方がよっぽど感情的だと自覚もある。私は思わず耳を塞ぎそうになった。

「やめて! そもそもなんで今言うの?」

 昨日、再会してからはそんな素振りひとつもなかったくせに。心の中で彼を責めたてる。

「弱ってるときに話すのはフェアじゃない気がして」

 けれど、亮の回答に口をぽかんと開けそうになった。相変わらず変なところが真面目だ。そこが彼らしくもあって、懐かしさで心が揺す振られる。

 とっさに距離を取ろうとするも亮に腕と肩を掴まれたままで、むしろさらに力が込められ彼の方に寄る形になる。

「離、して」

「離さない。今、逃がしたらきっともう二度と汐里を捕まえられない」

 切れ切れに抵抗しうつむいていると、真剣な声が耳元で囁かれる。

「許してほしいとは言わない。でも今度はもう間違えない。泣かせたりしないから」

 ふと掴まれていた手が解放されたと思ったのも束の間。亮の手が私の頬に添えられ、強引に上を向かされる。おかげで至近距離で彼と目線が交わった。

「だから、もう一度俺を選んでくれ」

 再会してから……もっというなら別れてからずっと蓋をしていた気持ちが、涙と共に溢れ出そうになる。
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