クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
「その、ひどい別れ方をしたんだって? 男はそいつだけじゃないよ。そんな最低な奴はさっさと忘れた方がいいって」
『違う!』ととっさに声にして否定したかった。でも、きっとそこから先の言葉が続けられない。それにこれ以上、彼に自分の話をしてどうなるの。
断り文句を再度伝えるのは、どうしたって心苦しい。私は意を決して唇を噛みしめる。ところが声にする前に頭に鋭い痛みが走り、思わず顔をしかめた。
昔から私は偏頭痛もちで、疲れがたまるとよく頭痛が起きる体質だった。額に手を当て、痛みをやりすごそうとする私の腕が不意に取られる。
「顔色悪いって。部屋で休んでいく?」
触れられてすぐに不快感が背中に這った。岡元くんは素知らぬ顔で囁く。
「俺、今日このホテルに部屋を取ってるから、休んでいきなよ」
「いい! お気遣いなく!」
「遠慮しなくていいって。案内するから」
腕を掴む手の力は緩められず、馴れ馴れしさに嫌悪する。本気で心配してくれているとしても大きなお世話だ。もう行かせてほしい。
ところが彼は、さらに私に身を寄せてきた。そして私の腕を引いてエレベーターのボタンを押す。
「いいじゃん。昔の男を忘れるためにも俺と付き合おうよ」
その言葉で彼が部屋で休んでいけと言ったのは純粋な申し出ではないと悟る。掴まれた腕の力が強くて、それはもう恐怖でしかない。
頭痛が消えないうえ、胸がざわつく。
「やめて、私――」
言いかけた言葉が止まる。突然、後ろから両肩を掴まれ、軽く引かれた。驚いたのは私だけではなく岡元くんもだったらしい。
『違う!』ととっさに声にして否定したかった。でも、きっとそこから先の言葉が続けられない。それにこれ以上、彼に自分の話をしてどうなるの。
断り文句を再度伝えるのは、どうしたって心苦しい。私は意を決して唇を噛みしめる。ところが声にする前に頭に鋭い痛みが走り、思わず顔をしかめた。
昔から私は偏頭痛もちで、疲れがたまるとよく頭痛が起きる体質だった。額に手を当て、痛みをやりすごそうとする私の腕が不意に取られる。
「顔色悪いって。部屋で休んでいく?」
触れられてすぐに不快感が背中に這った。岡元くんは素知らぬ顔で囁く。
「俺、今日このホテルに部屋を取ってるから、休んでいきなよ」
「いい! お気遣いなく!」
「遠慮しなくていいって。案内するから」
腕を掴む手の力は緩められず、馴れ馴れしさに嫌悪する。本気で心配してくれているとしても大きなお世話だ。もう行かせてほしい。
ところが彼は、さらに私に身を寄せてきた。そして私の腕を引いてエレベーターのボタンを押す。
「いいじゃん。昔の男を忘れるためにも俺と付き合おうよ」
その言葉で彼が部屋で休んでいけと言ったのは純粋な申し出ではないと悟る。掴まれた腕の力が強くて、それはもう恐怖でしかない。
頭痛が消えないうえ、胸がざわつく。
「やめて、私――」
言いかけた言葉が止まる。突然、後ろから両肩を掴まれ、軽く引かれた。驚いたのは私だけではなく岡元くんもだったらしい。