クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
 取られていた腕の力が緩められ、呆然とした面持ちでこちらを見ている。続けて私は背後にいる人物を確認し、これでもかというくらい大きく目を見張った。

 私が反応するより先に、前触れもなく現れた第三者に岡元くんが噛みつく。

「な、なんだよ、あんた」

「それはこっちの台詞だ。嫌がっている女性になにをしようと?」

 自分は夢か幻でも見ているのかと思った。冷めた言い方でも耳慣れた声に、さっきとは違う意味で私の胸は騒ぎだす。岡元くんは彼の指摘に気まずそうな顔になった。

「誤解だって。彼女が体調を悪そうにしてたから俺は気を利かせたんだ」

 岡元くんの言い分に、相手は顔色ひとつ変えない。

「そうか。なら、君は戻ればいい。まだ会の途中だろ? 彼女はこちらで責任を持つ」

 まさかの切り返しに、私は改めて彼を見た。彼は私を見ようともせず、岡元くんに鋭い視線を送っている。

 整った顔立ちは、記憶の中のものよりずっと大人びていて、気迫も増した気がした。岡元くんは(いぶか)しげに吐き捨てる。

「は? 関係ない人間がいきなりなに言うんだよ」 

「関係があるから、口を出してるんだ」

 間髪を入れない返答に、岡元くんは今度は(きょ)()かれた顔になる。そこでエレベーターがたどり着き、ドアが開いた。

 彼は私の肩を抱いて強引に乗り込む。私もろくに抵抗せず、されるがままだ。というより今の状況に頭がついていかない。

 行き先階のボタンを押し、エレベーターホールで言葉を失っている岡元くんに彼は微笑んだ。綺麗な顔なのに冷たさが滲んでいる。

「俺は、君の言う彼女とひどい別れ方をした“最低な奴”だよ」

 その発言に岡元くんは目を白黒させる。そして静かに扉は閉まった。
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