クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
「昔からずっと、亮は変わらずに優しいよ」

 本心を口にすれば、彼にそっと抱き寄せられる。そして(はか)らずとも、今の言葉は自分自身の心の中にも響いてきた。

「……私ね、少し不安だった」

 ポツリと呟けば、亮はわずかに身じろぎして腕の中にいる私を窺う。私は至近距離で彼の整った顔を見つめた。

 再会して、亮はスーツの似合う大人になっていて、昔よりもさらにカッコよさも増している。仕事も一人前にこなして、たくさんの人に必要とされ、認められている。

 昔から彼は優秀で特別な人間だった。それに拍車がかかっただけ。

 好きだときちんと言葉で伝えてくれるようにもなった。それが嬉しくないわけじゃない。変わらない人間なんていない。ただその振り幅が大きくて……。

「亮が、知らない人みたいに思えたの」

 亮と比べて私は? 彼に『変わらない』と言われるたびに胸が小さく痛む理由がようやく理解できた。ぎこちなく距離を取ってしまっていたもの。

 亮との恋をずっと引きずっていた。でも、あのときのままの気持ちで好きでいてもいいのかな?

 一度、別れるはめになったのに……今の亮に私はちゃんと寄り添えている?

 私だって成長して変わらないと、同じ(てつ)を踏むのはもう嫌なのに。

 亮は私の頭をそっと撫で、額を重ねてきた。

「俺が変わったと思うなら、それは汐里のおかげなんだ」

「私?」
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