クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
 そういえば昔、ふたりで行こうと約束していた映画のレイトショー当日、出かける直前になって私の頭痛がひどくなってしまったことがあった。

 おまけに微熱もあって自分のタイミングの悪さを責めた。

 薬を飲んでしばらくすれば平気だろうし、チケットもすでに購入していた。だから行こうという私に対し、亮は『無理をしても意味がない』と行くのを取りやめた。

 この映画はどちらかといえば彼が観るのを楽しみにしていたから、私は心苦しくてせめてもと思い提案した。

『よかったら亮ひとりでも観に行っておいでよ。ずっと観たいって言ってたでしょ?』

 今から誘えるなら別の人と行ってもらってもいいし。しかし亮は眉間に皺を寄せた。

『また別の機会もあるから気にしなくていい』

 続けてぶっきらぼうな口調で、私に薬を飲んで横になるよう告げてくる。素直に言うことが聞けずにいると、亮が私の額に手を置いた。

『それに、俺は汐里と観るのを楽しみにしてたんだ』

 目をぱちくりとさせ、続けて胸の奥が熱くなった。亮の一言で痛みも心も和らぐ。彼が好きだと改めて感じた。

 あのときと似た状況になって、当時の気持ちと同調する。
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