クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
 亮は弱音や悩みなどを含め、あまり自分の話をしない。いつも聞いてもらうのは私の方だ。

 年下だし、頼りないのも重々承知している。でも私だって亮の力になりたいし、寄りかかってもらいたい。

 しかし私の心意気などまったく響いていないのか亮が軽く鼻を鳴らした。

「汐里に話したところでな」

 馬鹿にしたというより、いつものからかい口調だった。それに私はいちいち反応する。

「ひどい! 人が真面目に心配して言ってるのに! 大体、亮はっ」

「サンキュ。でも本当に心配しなくていい。色々立て込んでいるだけで、もうすぐ落ち着くから」

 私の抗議をなだめるように亮は私の頭を撫でる。ああ言っておいて、彼の表情は嬉しそうで、そうなると私が折れるしかない。

「ならいいんだけど……本当に無理はしないでね」

 玄関で別れ際に軽く唇を重ねられる。

「汐里」

 唇が離れ、亮が困惑気味に私を見つめる。なにか言いたそうな面持ちなのに、それはすぐに消える。ここのところ、亮はこんな調子だった。

 なんだろう、どうしたのかな?

 家のことなのか、私との今後の付き合いについてなのか。モヤモヤを抱えて尋ねてみてもさっきみたいにはぐらかされるし。

 今はしょうがないのかな。私が思う以上に亮は忙しいのかもしれない。

 心配しながらも私は彼のマンションを後にした。
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