幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。

 私は思わず健一郎を睨んだ。

「嘘なんかじゃないわよ!」
「それはそう思いますが、佐伯医院を継ぎたくないだなんて誰が言いました」
「……え?」
「佐伯医院を大切に思っているのは、僕もです」

 健一郎は私の眼をじっと見つめる。「僕は日本で、この大学病院で一つでも多くの症例に当たりたいんです。海外に行く気は全くありません。僕は佐伯医院を、あなたと一緒に守るだけのために医者になって、今でも医者を続けているんです。それができないなら、医者をやっている意味がない」


 健一郎がそんなことを言って、私は戸惑った。
 健一郎にとって、うちの病院はただの地方病院というだけの存在だと思っていたから……。だって、研修だって大学病院だったはずだし……。

「なんで……? わ、私の実家だからって意味……?」
「話します。少しだけ、昔話を……」

 外では、雨が降り出した。健一郎は、ふっと私の髪をなでる。
 昔の健一郎のことなんて一度も聞いたことがなくて、私はきゅっと息をのみこんだ。
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