幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。

 やっと長い学会が終わり、懇親会に突入した。
 私は体力的な疲れもあったが、気持ちの面でもどっと疲れていた。やはり、たくさんの大学教員に囲まれるのは気をもむ。特に医学部の先生は難しい先生が多いのだ。
 ……って、他の学部の先生は良く知らないけど、うわさにはよく聞く。そう思っていると、隣に真壁くんが来てくれて、少し気もちが落ち着いた。

「三波、どうした? 大丈夫?」
「ありがとう。やっと懇親会だと思って……」
「ここまで、準備も大変だったもんなぁ」
と言って真壁くんは会場を見渡す。
 懇親会は主に企業のサポートがしっかりとしているので、事務員としては出る幕がない。先生方は先生方同士であいさつや話に余念がないし。

 会場の端にちらりと目をやると、懇親会会場でも、健一郎はいろいろな先生に囲まれていて、近づける隙はなかった。まぁ、そうだよね。と思う。そして、気づくと、また桐本先生が健一郎のそばで笑っていたのだった。

 その時、知らない先生が、真壁くんに話しかけてきた。
「東宮先生、最近ご結婚されたんですよね。お似合いですよねぇ。美男美女で」
「いや、お相手はあの先生では……」
 言った先生は、ほかの先生を見つけて、そちらへ歩いていく。
 困っている真壁くんに、私は
「こういう時はね、そうですね、って言っておけばいいの」と笑った。

「でも」
「別に、私と健一郎は似合ってないし。あっちのほうが似合ってるし。私が頭がよくて、医学部に進学できて医者になれてたら、あんなド変態と結婚しなくてよかったし。健一郎だって……」

―――健一郎だって、私と結婚することもなかった。

 そう思って、私は思わず唇をかんだ。
 私が健一郎といやいや結婚した形だと思っていたけど、それは健一郎にとってはどうなんだろう。

 健一郎だって、もしかしたら、医学の話ができる相手の方がよかったんじゃないだろうか。私は、医学的な話も、看護的な話もできるわけではない。
 別に健一郎にとって、プラスになっているわけではないのだ。

 そんな私を見て真壁くんは私にワイングラスを渡す。
「はい、今日は打ち上げだから、飲もう。三波のおかげで、無事に乗り切れたし」
「ありがとう」

 そう言われると、お世辞でもうれしい。
 私達は乾杯をし、真壁くんと二人で飲み始めたのだった。
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