クリスマスの朝
ロシア、世界で最も広い国。ヨーロッパ諸国やアジア諸国とと国境を接し、太平洋と北極海に面している。

一月六日。大雪が降るこの国に、グレーのチェックのコートを着てキャリーバッグを押しながら空港を歩く女性が一人。その目は輝き、頰を赤らめていた。

彼女の名前は、柏木雪音(かしわぎゆきね)。雪音という名前だが、雪の降る地域に住んでいるわけではない。雪があまり降らない静岡県出身だ。

「わあ〜、とても綺麗……」

雪音は窓の外で降っている雪を見て、思わず足を止める。そしてその黒い瞳に雪を焼き付けるように、じっと雪を見つめ続けた。

「ズドラーストヴィチェ!(こんにちは!)そんなに雪が珍しい?」

可愛らしい声で後ろから話しかけられ、雪音は後ろを振り向く。百八十センチは超えているであろう長身の銀色の髪の男性だ。白いコートを着ている。

「ミハイル!だって、こんなに雪を見るなんて初めてだもの。いいお話が書けそうだわ」
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