クールな婚約者との恋愛攻防戦
「そうか、そうか」
と頷きながら答えるのは父。

父は優しい笑みを浮かべながら私を見て、


「実はな。今、とある大事な話をしていたんだ」

「とある大事な話?」


大事な話って……お見合いの場で話すくらいだから、よっぽど大事な話だろうか?


「実はな。来週から、愛梨と樹君、二人きりで生活してみたらどうかって話をしていたんだ。そこで、お互いのことを結婚前によく知り合うといい」

「えっ……」


ふ……二人きりで生活⁉︎
何故、急に⁉︎ まだ、正式に婚約が決まった訳でもないのに⁉︎

ていうか、お見合いなんてお堅いことをさせたと思ったら、今度は同棲? 振れ幅が凄いな。



「あ、愛梨さんのお父さん。少し待っていただけますか? 同棲ってどういうことですか?」

そう話すのは、私の隣にいた樹君だ。

困惑の表情を浮かべながら、樹君は話を続ける。


「突然そんなこと言われましても、きっと愛梨さんだって困ると思ーー」

「楽しそう!」

「はあ⁉︎」


だけど私は、食い気味で自分の意見を父達に伝えた。


すると、父とお父様は二人して満足そうに頷き、


「愛梨さんがそう言ってくれるなら、問題ないな! 場所は、高原家が保有している別荘だ」

「愛梨、寂しくなったらいつでも連絡するだぞ!」

と話し、同棲の件はあっさりと解決した。



「いや、ちょっと待ってください! 父さんも何とか言えって」

……と、樹君はどうやら不満っぽいけれど、お父様は聞く耳を持たない様子。

勿論、私は楽しみ。

実家を出るのも初めてだからそれだけでもワクワクするけれど、更には、樹君のことをもっとよく知る為に一緒に暮らすだなんて。


一体どうなるのか想像が全くつかないけれど、それが逆に面白そうな予感しかさせない。


「すぐに暮らせるようにしておくから、一週間後くらいに同居を始めるといいよ」
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