クールな婚約者との恋愛攻防戦
列は空いていて、私達の順番はすぐにやって来た。


黄色いゴンドラに乗り込み、向かい合って座る。


まだ夜景が眩しい時間帯ではないけれど、沈みかけた夕日に遊園地のライトアップが重なり、ずっと目に焼き付けていられそうな素敵な景色だった。



……だけどそれもあってか、柄にもなく少し緊張してしまう。



「た、楽しかったね。今日」

上ずりかけた声で私がそう言うと、樹君は「そうだな」と答えてくれる。


素っ気ない言い方だけど、樹君は思ったことは何でもそのまま言う。だからきっと、本当に楽しかったと思ってくれているのだと思う……。



さっきまで並んでいた観覧車の列には、カップルがたくさんいた。

カップル達は、手を繋いだり腕を組んだりしながら順番を待っていて、中には「頂上に着いたらキスしようね」なんて言っている人もいた。



キス、か……。



もしかしたら、そのくらいのことしないと、私のことずっと妻として見てくれないのかもしれない。

子作りはするとかしないとか前に言っていたけれど、それとこれとは意味合いが違う気がする……。


でも、キスなんて当然したことがないから、そこを意識すると戸惑ってしまう。
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