クールな婚約者との恋愛攻防戦
「愛梨、どうした? 変な顔して」

よほど難しい顔をしていたのか、樹君に首を傾げられる。


とは言え、変な顔って。そんな言い方しなくてもいいのになあ。

私って本当に、女性として見られてないんだなと、そんな一言からでも分かってしまう。



「私だって、女なんだよ」

ぽつりと呟く言葉に、樹君が「え?」とまたしても首を傾げる。


「そうだな、女だな」

「分かってない。妹と女は、違うんだよ」


……すると、私の発言の意図を今度は何となく察したらしい彼は、一回視線を宙に彷徨わせた後、もう一度私とゆっくりと目を合わせる。


「……何か気を悪くさせたのなら悪い。傷付けるような意味合いはなかった」

「……うん」

傷付ける意味合いがなかったなんてことは、言われなくたって分かってる。
でも、無意識で言われたのだとすれば、私にとってはその方が酷だ。嫌味でわざと言われた方がマシだった。



「ねえ、樹君」

「何だ?」


「……観覧車の頂上で、キスしよ」




キスをすれば、樹君だって私のことを少しは意識してくれるはずだ。

付き合っている訳じゃないけど、私達は婚約者。キスをしたって、おかしくない。


……キスって、そんなことの為にするものなのかは分からないけど。
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