クールな婚約者との恋愛攻防戦
「樹君。起きてー」

彼の隣に腰掛け、肩に手を乗せて軽く揺すってみるけれど、反応はない。


端正な顔つきのまま眠る樹君。

この人、寝顔もこんなに綺麗なんだなあ……と思う。



無防備な彼の顔から、何故か目が離せなくなる。

そして無意識のうちに、顔を近付けてしまいーー



「ん……」

しかし、小さく寝惚けた彼の様子を見て、ハッと我に返り、彼から距離を取ってソファにきちんと座り直した。


「あれ……。しまった、寝てた」

ボーッとしていそうな様子で目を擦りながら、樹君が目を覚ます。


「お、起こしてごめんね。お風呂どうぞ」

「ああ」

立ち上がってリビングを出ていく樹君の背中を、しばらくの間、ただじっと見つめた。



……私、今何しようとした?


もし、樹君が起きてこなかったら……。



自分の行動に驚き、そして恥ずかしさを感じながら、私もリビングを後にし、自分の部屋へと向かった。

そして、ベッドにうつ伏せに倒れ込むと、枕に顔を埋めた。
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