ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物
そんな風に執事さんを説得すると、早速作業に取り掛かった。


パミスが何なのかよくわからないけれど、……なるほど、等身大の人間よりだいぶ大きいのに、私の力で割と楽に持ち上げることができた。

ざらりとした質感。

これって……軽石みたいなもんかな。


独りで運べそうなので、神像を抱えて歩き出したら、ご先祖様の棺の前に跪いて祈っていたイザヤと目があった。


「何をしているのだ。……そなた、まさか、神々の像を、壊すつもりか?」


イザヤの詰問に、私はぶるぶると首を振った。


「そんなことできるわけないやん!……でも、ここに置き去りにしたら確実に壊されるやん?……それなら、ちょっと使わせてもらおうかなーって……。」


イザヤの目が怖くなって、私は言い淀んだ。

初対面の頃以来かもしれない。

不信感いっぱいの冷たい視線。


……政治と宗教に下手に触れちゃいけないと言うけれど……いつもは寛容なイザヤも、さすがにナーバスになってるんだろうなあ。



いつの間にか近くにいた執事さんが、見かねて助け船を出してくれた。

「お館さまの楽器をすべてお運びしたいのですが、とても船だけでは足りません。神々にお手伝いいただくということで、どうかお許しください。」


楽器のためと理解して、イザヤの表情が和らいだ。

「そうか……。しかし、館には、ティガがいるのだろう?……嫌がるぞ。」

「うん、嫌がるやろうね。いいやん。ささやかな、イケズやん。……まさか、イザヤの目の前で神像を壊さへんやろし。」


イタズラっぽくそう言ったら、イザヤはちょっとほほえんでくれた。


「……なるほど。そうだな。それぐらいの嫌がらせは、許されるか。……ティガの反応が楽しみだな。……どうせなら、婚約者どのもいれば見ものだったろうに。」

「あー、イザヤ。シーシアは、婚約者じゃなくて、奥さん。結婚したやん。一応。……帰国したらしいけど。」

思わずそうつっこんでから……自分が側室だということを思い出して、笑ってしまった。


イザヤも苦笑いした。

「そうだったな。許せ。婚約期間が長すぎた。癖になっているようだ。」



私は、肩をすくめて見せて……、それから、再び石像を持ち上げた。

軽いけど大きいから、バランスが悪い。


すこしよろけた私を見かねて、イザヤが支えてくれた。


「よい。私が運ぼう。……そなたは、鳥のいざやの面倒をみてやれ。」
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