ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物
「……売るんじゃなくて、保護してもらうの。……楽器も……イザヤも。」

「保護?私も?……いったい、誰に……。」


困惑しているイザヤに、私は力強く宣言した。


「もちろん、カピトーリに。……ティガを通して、カピトーリと交渉する。それが一番、安全やと思う。」

「……。」


イザヤも、執事さんたちも、唖然としていた。

どうやら荒唐無稽と思われたらしい。


まあ、いい。


「まずは、お別れのお祈り。終わったら、楽器の積み込み。いいわね?行くわよ。」

まるで往年の戦隊物のヒロインのお決まりの台詞みたいだなあと、この世界の誰にも伝わらないネタにこっそり笑った。


****

イザヤの楽器道楽は、やはり半端じゃなかった。

小型ながらグランドピアノのような形のクラヴィシンまであるので、とても2艘の小船には乗り切らなさそうだ。


さあ、どうしたものか……。


イザヤが心ゆくまで、神々やご先祖さまに祈りを捧げているのを横目に、私は執事さんたちに手伝ってもらって、楽器の梱包を始めた。

積み上げた楽器たちを眺めて、思案した。

無理やり船に乗っけても、バランス悪過ぎて転覆してしまいそうだし……なにか、簡易的に筏になるようなものは……。


「あの馬鹿でかいベッド。あの下に確実に浮くモノを並べたら、全部運べそう。……何かありません?……空の樽とか……?」


執事さんは首を傾げていたけれど、使用人くんが閃いたようだ。

「浮けばいいんですよね?……全部じゃないけど、神々の像の中に、軽い素材のモノがありましたよ。」

「へ?……全部、大理石とか、石ちゃうの?……どれ?」

「確か、あの大きな……」


使用人くんの指さした像は、神々の中でも大きな像たちだった。


近づいて、触れてみる。

……他の石より冷たくない。


確かに、無数の小さな穴があいていて……まるで軽石のように粒子が荒い。



「パミスですね。……確かに、コレなら浮きますが……神像を、そんな風に利用するのは、ちょっと……。」

執事さんが言いにくそうにそう言った。



まあ、気持ちはわかる。

わかるけど、他に手立てがないんだから仕方ない。


「ここに置いといても、どうせカピトーリの人達に壊されちゃうやん。それなら、有効利用させてもらおう?……それに、ティガたちカピトーリ人の待ち構えるところに、オーゼラの神々を連れてくって思ったら、ちょっと痛快じゃない?」
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