ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物
いつになったら、イザヤに逢えるんだろうか。


「私も行ってみたいなあ……。カピトーリに。……てか、旅してみたい。」


そうつぶやいたら、ティガが笑顔を見せた。


「よろしいですね。イザヤどのの楽器資料館が完成いたしましたらお連れいたしましょう。……どうやら工事が遅れているようですが……。」


遅れてる?

まさか、わざとじゃないでしょうねえ?



じとーっとティガを恨みがましく見つめたけれど、ティガは気にせず続けた。

「シーシアさまのおられる神宮にも、一度行ってみてもよいかもしれませんね。……その前に、オースタ島もありますし。……旅の予定がたくさんできましたね。」


「……オースタ島は、旅に入らんわ。ピクニックやわ。……あ、はいはーい!オースタ島を越えて、向こう岸に行きたい!ムードラ山脈までは行かなくていいから。」

手を上げて、そうおねだりしてみた。

 

ティガはレアダンスモレン湖に視線を移し、はるかにかすんで見える青紫の山脈を眺めながら言った。


「そうですね。もう少し温かくなれば……鳥の伊邪耶くんが好きなオーツ麦が収穫できるでしょう。刈り取りに、行きましょうか。」


「え!?オーツ麦、向こう岸に植えてたん?」


びっくりした。


たぶん、イザヤも知らないはず。

だって聞いてないもん。


……てことは……イザヤに無断で、ティガは向こう岸に行っている……自分で行ってなくとも、少なくとも人をやって探索とかしてるの?
 

こわっ。

ティガ、怖いわ。




「はい。寒いところで育つとまいらが教えてくれたので、向こう岸の平地と、台地、山の中の3箇所に分けて栽培しています。現在のところ、台地の生育が一番良好なようです。」


……しかも、ちゃんと経過観察させてる……。



「そうやったんや。……あちらは、人間の住むところじゃないってイザヤが言うてたんやけど……ちゃんとティガは農地として有効利用してたのね。」



しみじみそう言うと、ティガは少し笑った。



「イザヤどのらしいですね。実際、住宅はございません。しかしよい漁場はありますので、人の出入はあるのですよ。鉱物も期待できるでしょうし。……数年後には、軍事利用もされるでしょうから、移住も始まるかもしれませんね。」


「軍事……てことはオピリアに遠征の予定もあるんや。」

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