ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物
「そなたに怒ってるのではない。心配してるんだ。」


食事を終えてから、ようやくイザヤはそう言った。



……まあ、心配してくれてるのはよくわかったけどさ……今、現在は、ふつうに怒ってるやん……。


反論は呑み込んで、私はもう一度、謝った。

「ごめんなさい。」


ようやくイザヤは、ふっと表情をゆるめた。


「剣術を学びたいなら、私が教えてやる。ティガは、さほど得意ではないから負担だろう。」

「え!いいの?」

やったー!と、私は両手を挙げて喜んで見せた。


さっきの剣を見るだけでわかる。

イザヤは、たぶんマジに強い。



「ああ。……そうだな、朝食前にでも稽古するか。だから、戯れでも、二度と自分に敵意を抱いている者と剣を交わすな。」


へ?


イザヤの言葉の意味がよくわからなくて、私は少し考えた。

「……リタのこと?」


イザヤは何も言わなかった。


否定もしないということは、リタのことなのだろう。


やだ、本当に心配してくれたんだ。


確かに、リタは遊びじゃなく、真剣に私に挑んできた。

殺意とまでは言わないけど、敵意むき出しでまっすぐぶつかってこられたよ、うん。


でも、ズルイ子じゃないことはよくわかった。

むしろ、不器用なほどに真っ直ぐ来るから、私は好印象を抱いたぐらい。

リタ、嫌な子じゃないよ。

今はまだ無理でも、いつか仲直りできたらいいな。


***


「ドラコが来るまでに、一通りの行儀作法を覚えておけ。」

食後のコーヒーを飲みながら、イザヤは私にそう命令した。


「……いつぐらいまで?目安ある?」

「20日から30日先だろう。ダンスや社交も身につけたら王城の舞踏会にも連れてってやってもいいが……いや、もう少し育ってからのほうがいいか。」

イザヤはそう言って、片頬だけ上げて笑った。  

……また、いやらしいことを考えてない?


少し拗ねそうになったけど、ふと気づいた。

「ねえ?ドラコって、危ないヒトなのよね?私、会わないほうがいいんじゃない?」


すると、イザヤはぶぶっと吹き出し笑いをした。

「……そなた、それは、図々しいというものだ。別にドラコは、女なら誰でもいいわけじゃない。リタだから食指が動いたんだろうよ。」


……あ、そう。

てか、何か、ムカつくなあ、今の言われかた。


「どうせ、リタは美人さんで、私は平凡でしかありませんよーだ。」

イザヤに聞こえないように小声でそうつぶやいた。
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