策士な課長と秘めてる彼女
「蒼井さん、何のために゛真島課長゛がこれまで頑張ってきたと思う？社長になるためよ。そのためには有能な秘書で完璧な妻の役目が果たせる私が必要なの。あなたでは役不足よ。わかるでしょ？これまで彼女を作らなかったのもそのためよ」

槙が有能な秘書であることは敢えて否定しないが、陽生がHashimitsuの社長になりたくて頑張っていたというのは初耳だ。

そのために槙との結婚を真剣に考えていたというのも陽生の口からは聞いていない。

日葵は黙って成り行きを見つめていた。

「言いたいことはそれだけか？これまでお前の好きなように利用されてきてやったが、日葵を侮辱したり傷つけるのは許さない」

日葵を抱き締める陽生の瞳は、いつもにまして冷淡で怒りに満ちていた。

「ま、真島くん。娘は君にフラレて動揺しているんだ。どうか許してやって欲しい」

そんな橋満社長の言葉に、陽生は

゛ハッ！゛

と馬鹿にしたように吐き出した。

「お言葉ですが橋満課長、お宅の娘さんはそんなに純情なたまではありませんよ」

ニヤリと笑う陽生には、反撃の時を目の前にした戦国武将のようなしたたかさが溢れていた。

「な、何を知ってるっていうのよ」

「槙、俺は月曜日に忠告してやったはずだ。お前はそれを無視して、こうして俺達の前に現れた。覚悟はいいな？」

余裕綽々とした陽生に、今度は槙が怯む番だった。
< 122 / 149 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop