策士な課長と秘めてる彼女
「社長、槙が俺のことを隠れ蓑にして、散々社内の男達を食い物にして来たことを知ってますか?」

陽生の言葉に、橋満社長だけでなく日葵も、もちろん、槙も固まった。

「しかも相手は全員妻子持ち。不倫だから、相手からはもちろん文句はでない。後ろめたさもあるから、相手は半分槙の言いなり。そうやって槙が得てきたものは何なんでしょうね?」

人事部長、経営課長、企画課長、果てには営業部のイケメンくんまで、陽生から語られる人物の名前は驚くものばかり。

全員、妻想いで家庭的だと言われている人達。

橋満社長も日葵も驚きで言葉が出なかった。

「ちょ、ちょっと、自分の浮気を誤魔化そうとして嘘を並べ立てないで。パパ、陽くんの言うことを信じてはダメよ。結婚したくないための嘘なんだから」

つんとした態度は全く悪びれても、キョドってもいない。

さずが6年間もわが社の重役達を手込めにしてきただけのことはある、と日葵は感心していた。

「百歩譲って、社内だけなら目を瞑ってやろうとも考えていたが、さすがに取引相手の社長にまで手を出し始めたのは黙っていられない」

陽生が語ったのは、日葵が家を出た日に陽生が接待をしていた相手。

食品加工会社の社長の名前だった。

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