太陽と月

真也さんと本庄さんが出て行き、リビングに1人になった。


颯介は、家であまり話さないんだ。
月の出てる夜はよく話してくれる颯介の笑顔が浮かんだ。


笑顔と言ってもそれは、愛おしい人を見る笑顔では無く、何の感情も感じ取れないものであったけど。


持って来た本を再び読む気にはなれず、目を閉じる。









「…ん!…さ…ん!」
肩を揺すぶられている感覚がした。


自分が寝ていた事に気付き、目を開けた。そこにはマリ子さんがいた。


「椿さん!こんな所でうたた寝してたら風邪引いちゃいますよ」そう笑っていた。


「寝ちゃった。マリ子さん今日のご飯は何?」うーんと伸びをして聞く。


「今日は、オムライスですよ。隠し味は溶き卵の中にバターとマヨネーズを入れる事です」そう教えてくれた。


「マリ子さん…いつも隠し味を教えてくれるけど、それっていいの?」初めて会った日から、料理の隠し味を教えてくれる。

肉じゃがの隠し味は味の素を入れる事

焼きそばの仕上げに少しだけ、ごま油を入れる事


ギョウザの隠し味は具の中にキクラゲを入れる事


カレーの隠し味はインスタントコーヒーを入れる事


まるで母親の様に色々と教えてくれた。


マリ子さんはにっこりと笑って


「他の人には内緒ですよ。いつか、椿さんも大切な人が出来た時に作って差し上げて下さいね」そう言ってキッチンに戻って行った。





大切な人が出来た時。
私にもいつかそんな人が出来るのだろうか?


< 102 / 230 >

この作品をシェア

pagetop