太陽と月

「…ご褒美?」そう私が聞くと


陽介は両手を顔の前でブンブンと振り顔を真っ赤にして


「いや!嘘嘘!やっぱりいい!ごめん忘れて!寝る!」とまくし立てる様に言って立ち上がった。


私は陽介の服の裾を掴み


「待って!陽介!ご褒美何が欲しいの?」そう聞く私をチラっと見て


「笑わない?」


「笑わないよ」


「馬鹿にしない?」


「馬鹿にしないよ」


「誰にも言わない?」


「誰にも言わないよ」


陽介が聞くことを全てオウム返しで肯定する。


くるっと私の方に体を向け、顔を真っ赤にして小さな声で呟く。


「…れる…で…いっ…にい…欲しい」


何言ってるか全然聞こえなかった。


「陽介、聞こえない。もう1回言って」そう言うと捨てられた子犬みたいな目で、


「寝れるまで一緒に居て欲しい…」


「…」


「…」


「ぷっ…」私は思わず声を出して笑ってしまった。


陽介は顔を真っ赤にして


「笑わないって言ったじゃん!」


「ごめんごめん。だって陽介、子どもみたいな事言うから!」


「馬鹿にしないって言ったじゃん!」


拗ねた様に口を尖らせる陽介が可笑しくてまた笑ってしまった。


「もういいよ!寝る!」そう言ってまた私に背中を見せる。


私はその背中に向かって
「陽介!ご褒美あげるよ!」私は笑顔で声をかけた。
< 116 / 230 >

この作品をシェア

pagetop