太陽と月
「…ご褒美?」そう私が聞くと
陽介は両手を顔の前でブンブンと振り顔を真っ赤にして
「いや!嘘嘘!やっぱりいい!ごめん忘れて!寝る!」とまくし立てる様に言って立ち上がった。
私は陽介の服の裾を掴み
「待って!陽介!ご褒美何が欲しいの?」そう聞く私をチラっと見て
「笑わない?」
「笑わないよ」
「馬鹿にしない?」
「馬鹿にしないよ」
「誰にも言わない?」
「誰にも言わないよ」
陽介が聞くことを全てオウム返しで肯定する。
くるっと私の方に体を向け、顔を真っ赤にして小さな声で呟く。
「…れる…で…いっ…にい…欲しい」
何言ってるか全然聞こえなかった。
「陽介、聞こえない。もう1回言って」そう言うと捨てられた子犬みたいな目で、
「寝れるまで一緒に居て欲しい…」
「…」
「…」
「ぷっ…」私は思わず声を出して笑ってしまった。
陽介は顔を真っ赤にして
「笑わないって言ったじゃん!」
「ごめんごめん。だって陽介、子どもみたいな事言うから!」
「馬鹿にしないって言ったじゃん!」
拗ねた様に口を尖らせる陽介が可笑しくてまた笑ってしまった。
「もういいよ!寝る!」そう言ってまた私に背中を見せる。
私はその背中に向かって
「陽介!ご褒美あげるよ!」私は笑顔で声をかけた。