太陽と月
「陽介…ごめんね…」繋がれた手をギュッと握り返した。
「椿!謝るな!ごめんねって言うな」そう私の目を真っ直ぐ見る。
でも、陽介にはごめんねって言葉しか出てこない。
弱くてごめんね。何も出来なくてごめんね…。
「椿!ごめんねじゃなくて、“ありがとう”って言われる方が嬉しいんだけど?」そう微笑む。
そっか。いつからか私はごめんなさいって言葉が癖になっていたと思う。
いい子じゃなくてごめんなさい。
ママの役に立てずにごめんなさい。
弱くてごめんなさい。
醜くてごめんなさい。
いつもいつも、そう思っていた。
私は涙を拭き、陽介に笑顔で言った。
「助けてくれてありがとう」
「当然の事しただけだよ」とニコっと笑ってくれた。
その後は不器用ながらも陽介の怪我の手当てをした。
「早く治るといいね」
そう呟く私に
「直ぐ治るよ!治らないと困る!もうすぐ体育祭だろ?今年はぜってー颯介には負けねー!」と颯介が居るリビングを指さした。
そっか。リレー選手に2人とも選ばれてるんだっけ?
「俺はいつも颯介にあと少しのところで負けるんだよなー。武道も毎年のリレーも勉強も…」そう少し悔しそうに言う。
「でも!陽介が颯介に勝ってるところもあるよ!」思わず前のめりになって言ってしまった。
少し驚いた顔をする陽介。
「…陽介の笑顔は誰にも負けないくらいキラキラしてるよ!」と言ってから恥ずかしくなり下を向く。
すると釣られて陽介も顔を真っ赤にしながら小さな声で、サンキューと言ってくれた。
私はこの穏やかで愛おしい時間が永遠に続いて欲しいと願った-------。
怪我の手当てを終わり、陽介に痛み止めを渡す。
すると陽介は言いにくそうな感じで
「椿…あのさ…」と呟く。
私はカットバンや消毒液を片付けながら
「どうしたの?」と聞いた。
陽介は小さく息を吸って
「俺!ご褒美が欲しい!」そう照れながら言った。