太陽と月
私はその背中を目で追っていた。
本当は今すぐ颯介に駆け寄って、言いたい。
“頑張ったね”って。
私が何かで1番を取った時に望んでいる言葉。
施設にいた頃は、常に1番を目指していた。
ママが迎えに来た時に誉めて欲しかったから。
でも、私がどれ程1番を取っても周りから言われていたのは
“施設に住んでて可哀想だから、特別扱いされてるだけでしょ”
だった。
私は悔しかった。皆が遊んだり、寝てる時間に必死に勉強もした。
認めてもらえる様に常に“いい子”でいた。
どんな時も笑顔は絶やさなかった。
颯介は笑顔も見せないだけで、学校では優等生だし、常にトップでいる。
私と一緒で誰かに認めて欲しいから。
颯介の気持ちが痛い程分かる。
だからこそ、颯介に言いに行きたかった。
“頑張ったね”って。
でも、こんな時でも私は結局、自分の保身しか考えていない。
今、颯介の元に行けばきっと女子達に中傷される。
折角、仲良くなれたクラスメートが離れていく。
そう思うと、足は動かなかった。