太陽と月

「陽介さん、お疲れ様です」河口さんが微笑む。


「おっ椿!今日は練習の日だったんだ。足大丈夫?」と私に話しかけてくれる。


今は何故かその陽介の笑顔が胸を締め付ける。


「…うん。大丈夫」


そっかと私の頭を撫でてくれた。


「河口さーん!最後のリレーも颯介に負けた!」と悔しそうに報告をした。


「それは残念でしたね。高等部に上がれば体育祭はありませんもんね」


私達の学校は中等部には体育祭はあるけど、高等部にはない。


代わりに文化祭があるらしい。


「マジ悔しい!」


そう言う陽介に後ろめたさを感じた。


私が声を出して応援をしたのは颯介だったから。


「あれだ!椿の弁当食い損ねたからだ!」と言う。


「…ごめんね。でも卵焼き食べたじゃん!」


「えー唐揚げも食いたかったし、おにぎりも食べたかったんだけど」と口を尖らせて拗ねる。


「また作ってあげるから」その言葉で満面の笑顔を向けてくれる。


よかった。普通に話せてる。


「あーあ!椿にカッコイイところ見せたかったのに!」


「…充分格好よかったよ!生徒会長として凄く頑張ってたの分かったよ。お疲れ様」そう陽介に伝えた。


「…生徒会長としてじゃなくて…」


最後の方が聞こえなかった。


私が首を傾げると


「男として…カッコイイところ見せたかったんだけど!」そう顔を真っ赤にして言ってきた。


私も釣られて顔が赤くなるのが分かった。


「はいはい!2人共!練習しないなら、お開きにしますよ!」と河口さんが手をパンパンと叩く。


「まぁ…今日は疲れてるし…。椿!練習切り上げてちょっと散歩しない?」そう陽介が誘ってくれた。
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