太陽と月


「「いただきまーーす!」」私と陽介の声が揃った。


今日の夕食のメニューは手巻き寿司だった。


手巻き寿司を食べるのは初めてだったけど凄く美味しかった。


夕食の場はやっぱり陽介がよく喋った。


颯介も話には入ってこないけど席を立たないところみると、それなりに楽しんでいるのかなと思った。


さっきまでの居心地が悪い空気はなく、いつもの楽しい雰囲気に戻っていた。


それは必死で陽介が作っていてくれたんだね。








「良し!腹も一杯なったし、俺は風呂に入ってくるよ」陽介はニカっと笑ってリビングを出て行った。


マリ子さんは片付けに入る。


必然的にリビングには私と颯介だけになる。


「…颯…」名前を呼ぼうとした時、リビングに誰かが入ってくる気配を感じた。


そこには
「真也さん!」スーツを着た真也さんが入って来た。


かれこれ、2週間は会っていなかった。


「椿!久しぶりだね」ネクタイを緩めながら微笑む真也さんに駆け寄った。


私をこの場所に連れて来てくれた人。


怖いと思う時もあるけど、真也さんが拾ってくれなければ私はきっと、あの施設で仮面を被り続けていた。


叶いもしない夢物語を描きながら…。


「真也さん元気してた?」


「ちょっと忙しくてね。颯介も久しぶりだね」そう颯介に笑顔を見せる真也さんを尻目に、颯介は無言で横を通り過ぎ、心なしか大きな音を立ててドアを閉め出て行った。


小さな溜息をついた真也さんは
「反抗期かな?」と苦笑した。
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