太陽と月

帰り道は、2人とも無言だった。


いつもなら心地の良い無言も、何だか居心地が悪いと感じる。


それは、きっと私が悪い。


日の当たる世界じゃなくて、日の当たらない暗い世界を選んだ罰だ。


そんな無言を打ち消したのは、陽介だった。


「椿。あのさ、俺は椿を信じてるよ。」その一言だけ言うと、再び静寂が訪れる。


“椿を信じる”その一言が堪らなく嬉しく…そして重たい…


そう思ったけど、私は何も言わなかった。


陽介…君はどんな時でも、私を信じてくれたよね。どんな嘘でも私を信じてくれた。









「ただいまー」2人して玄関の扉を開けると、リビングからマリ子さんが出て来た。


「陽介さん、椿さんお帰りなさい」


マリ子さんの笑顔を見るとホッとする。


「マリ子さんただいま」


「もうすぐお食事ですからね。陽介さんはリビングの服やらカバンをお片付け下さいね!」と笑顔で威嚇される。


「…はーい」陽介さ小さく返事をしてリビングに入っていった。


私は服を着替えるために部屋に向かった。


颯介の部屋の前を通り過ぎようとした時、ドアが開いた。


颯介の部屋から出て来たのは、天宮さんだった。


私がそこに居ると思っていなかったのか天宮さんは少し驚いた顔をしたけど、いつものクールな顔付きに戻った。


「…こんばんは」私が挨拶するも、天宮さんは目を逸らす様にして会釈だけして階段を降りて行った。


何なんだろうと疑問に思ったけど、早くマリ子さんのご飯を食べたいと思っていたので、特に気にすることはなかった。


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