太陽と月

「椿さん、手合わせしましょうか!」


準備運動とストレッチを終えた私に河口さんが微笑む。


練習はキツいけど、中々楽しくやれてる。気が引き締まる感じがする。











「椿さん、今日は何だか嬉しそうですね」

手合わせをして貰った後に河口さんが話かけてくる。


「うん!友達が出来たの!」


友達。施設にいた時も友達はいた。
友達…。友達と呼べたのだろうか?
私は…有希ちゃんに何をしたのだろうか…。


昨日は鮮明に思い出せた。
でも今日は思い出そうとすると頭痛がする。


「それはそれは良かったですね。」そう微笑む河口さん。


「ねぇ颯介って今日練習の日?」
夕飯パスって言ってたから気になっていた。


「颯介さんはこの後に来ますよ」
そう教えてくれた。


「そうなんだ!颯介の練習見てもいい?」
そう聞くと河口さんは困った様な顔で


「うーん。颯介さんは自分の練習時間は私以外、誰も道場に入れないんですよ。この前は例外ですね。」


何だか颯介らしいと思った。
無駄に人を寄せ付けないそんな雰囲気が出ている。


「そうなんだ…」


「今度、大会あるから見に来ますか?」と大会の案内チラシを見せてくれた。


「これに颯介も出るの?」


「陽介さんも出ますよ。全国の中学生が集まって来る大きい大会ですね。」

結構大きい大会なんだ…そう思っていると


道場のドアが開き颯介が入って来て
チラシを手に持つ私の所にツカツカと近付いて来た。


「河口さん、余計な事教えないでくれる?…練習終わったなら早く出ていって」そう目を合わしてくれる事なく言われた。


< 71 / 230 >

この作品をシェア

pagetop