大人の女に手を出さないで下さい
…………

家に帰ればまだ着替えもしていない英梨紗と鉢合わせした。

「あ、ママお帰り〜」

「英梨紗も今帰ったの?遅いじゃないもう10時過ぎてるよ?」

「ごめーん!でもお友達の家だし帰りは送ってもらったから大丈夫だよ」

へっへーと嬉しそうに笑う英梨紗によっぽど楽しかったらしいと梨香子もしょうがないなと笑う。

「ねえママ、パパとのデートどうだった?」

「え?別に食事して帰っただけよ」

「パパから質問されたでしょ?なんて答えたの?」

「え…ええ〜なんのこと〜?」

ニコニコしながら覗き込んでくる英梨紗に梨香子は引き気味。
蒼士のことを言ってるのだとわかるけどどう答えたら良いのやら。
というより、ママが心配なのはわかるけどもパパにママの好きな人のことを聞くとか英梨紗も酷なことをする。

ああ、だから英隆はあんなことをしたのか。と思い当たる。
急に復縁しようなんてあの英隆が言うはずも無い。
元妻とはいえ他の男の話をされて面白くなかっただけだ。
じゃああのキスは…ただの腹いせ?
久しぶりの感触に一瞬でも懐かしいなんて思ってしまった。
唇に思わず触れてドキドキと鼓動が早くなる。

「やだな…今頃動揺するなんて…」

「ん?なんか言った?」

「ううん、なんでもない」

誤魔化した後も、ねえねえ何話したの?と迫ってくる英梨紗をなんとかかわしたけども……。




最近私の周りはみんなおかしい。

自分だけがまともだと思ってる梨香子は、チラチラといつもとは違う視線を感じながら気にしないように黙々と仕事をした。

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