大人の女に手を出さないで下さい
今日はスパイスライフの元倉が商談に来る日。
ぽろっとそのことを蒼士に話したら俺も行くと言いだした。
梨香子さんに近付く男は牽制しておかないと、と呟く蒼士の声は梨香子には聞こえない。
「え?仕事があるでしょう。それに店に関係ない蒼士くんが来てもどうしようもないじゃない」というと「婚約者の仕事がどういうものか見てもいいだろう?」と言ってのけた
「梨香子さんも俺の会社見に来てもいいよ」と言われたのは遠慮させてもらいますと返した。
絶対行くからと念を押されてそろそろ時間だと思うとなんだかそわそわしてしまう。
「こんにちは国永さん」
「あっ、元倉さんいらっしゃい」
蒼士が来る前に元倉が来てしまい梨香子は内心慌てる。
元倉は初めの誘いを断ってからは何度も商談に来てるが食事といえども断ってきた。
それでも毎回めげずに誘ってくるから大したものだ。
チラチラと向けられる視線が甘い気がして梨香子は気にしないように努めた。
「今日はお知らせがあるんですよ」
そう言って差し出してきたのは一枚の紙。
「ヨーロッパ買い付けツアー?」
「そうです、今回初めての試みなんですが我々の買い付けにお得意さまも参加してもらおうと企画しまして。ぜひ、国永さんも参加して頂きたいなと思いまして」
「へえ…」
旅行会社とのコラボ企画だそうで、内容は6日間でフランスとイギリスの観光名所を回るのと蚤の市や懇意にしてる雑貨ショップを周り買付してくるという。
「正直言うと観光の方がメインなんですが、買付では本物を見極めるいい勉強にもなりますし、フランスでは格式高い古城のホテルに泊まるんです。日常を忘れられるひと時になりますよ」
買い付けなんてしたことが無いけど楽しそうだ。
イギリスとフランスなんて雑貨好きなら一度は憧れるアンティークの宝庫。
でも、海外旅行もしたことが無いのでツアーだとしてもちょっと不安だ。
それに6日も家を空けるなんて英梨紗を一人にしてしまう。
興味はあるけどどうしようかとう~んと唸ってると梨香子さん、と呼ばれた。