大人の女に手を出さないで下さい
数日後の休みの日。
蒼士も休みで初めての昼間からの二人だけのデートとなった。
英梨紗に楽しんできて〜と送り出されたのだが、蒼士はどうも浮かない顔。
映画を見てる間もストーリーに見入ってるのかと思ったらどうやら考え事をしてたらしい。
カフェで一息ついて映画の内容を言ってもそうだっけ?とまるで覚えてない。

「映画、楽しくなかった?」

「え?いや、そんなこと無いよ」

「そう?私には映画そっちのけで考え事してたように思うけど」

チクリと皮肉を言うと蒼士は強張った顔で俯いてしまった。
言い過ぎた?なんて思ってると意を決したように蒼士は顔を上げた。

「実は…梨香子さんに話そうかどうしようか迷ってたんだけど…隠し事はしたく無いから言うよ」

真剣な面持ちにこれは良くない話かと梨香子は一瞬ドキリと心臓が波打った。

「梨香子さんが聞いても気持ちのいいものじゃないけど、最初に言っとく。決してやましいことは何も無いから」

話してもいいかと聞かれて、梨香子は背筋を伸ばしてどんな内容でも受け入れる覚悟をしてしっかり頷く。

「時々前の職場の後輩の相談を受けてたんだ。ほら、前に梨香子さんも会ったことあるだろ?親父と」

「あ…うん。覚えてる」

あの、川浦あやかとかいう彼女だ。
蒼士にはあの日彼女が店に乗り込んできたことは話していない。
でもこれで蒼士が話したい内容は大体掴めた。

「仕事でほんとに悩んでたと思うんだけど最近内容が相談ではなくお互いの近況を話すだけになってね、梨香子さんと婚約もしたしそろそろ相談役を降りてもいいだろうと思って切り出したんだ。その時はそうですかってすんなり頷いてくれたんだけど…」

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