大人の女に手を出さないで下さい
車の中で英梨紗はぽつりと梨香子に聞いた。

「ねえママ、あたしに赤ちゃんが出来てたら嫌だった?」

「え?なんでそんなこと聞くの?」

驚いて英梨紗を見ると困ったような泣きそうな顔で、ミラー越しに見ていた蒼士も心配になる。

「あたし、赤ちゃんが出来たかもって思った時、ちょっと嬉しかったんだ。たっ君の事大好きだから、大好きな人の赤ちゃんだと思ったら嬉しかった。でも、たっ君に言ってもし赤ちゃんなんていらないって言われたらすごくショックだし、そのことでたっ君と別れたりしたらどうしようと思ったら言えなくて、降ろすなんて考えられないし誰にも相談できなくてどうしたらいいかわからなくて…」

グスッと鼻をすする英梨紗を梨香子はふんわり抱きしめる。

「英梨紗に赤ちゃんが出来たらそりゃあママだって嬉しいわよ?だってママにとっては初孫だもの。ママがおばあちゃんだなんてまだちょっと想像できないけど」

へへっと肩を竦め笑う梨香子に英梨紗もつられて笑う。

「でもね、今、赤ちゃんが居なくて良かったって思ってる。だって英梨紗はまだ高校生でしょ?まだ一年高校生活が待ってるし、美容師になる夢もあるでしょう?子供が出来るとね、そういうこと全部一度諦めないといけないの。もちろん子供を産んでから高校生をやり直したり夢を追いかけることもできるしそうやって頑張ってる人も沢山いる。だけど、しなくていい苦労も沢山あるの。子供は可愛くて宝物だけどどうせできるなら夢をかなえてきちんと結婚してから出来て欲しいなと思う」

英梨紗にはまだ想像できないのだろう。納得してるのかしてないのか英梨紗はじっと梨香子を見つめる。
勿論、梨香子が言ったことばかりではなく幸せに子育てしてる若い子も沢山いると思う。
だけど、英梨紗にはきちんと高校を卒業して夢を叶えて欲しいと梨香子は思う。

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