大人の女に手を出さないで下さい
何だか面白くない…。

折角の博物館で興味をそそられるものが沢山あるというのに梨香子はどれもつまんなく思えて一人こっそりため息をついた。
その原因はもちろん前を歩く蒼士で、両脇を固める女性二人に少しばかりヤキモチを妬いていることは自覚している。
だからといって二人の間に割って入って私の婚約者なんだから馴れ馴れしくしないで!と言うのは大人の女としてプライドが許さない。
余裕なふりをして梨香子は深田夫妻と楽しそうに話をした。

そんな女心をわからない蒼士は二人に言われるがまま説明をしては感激されて、腕に絡まってくるその手を振りほどこうともしない。
若い子に囲まれて鼻を伸ばしてるんじゃないかと蒼士の背中に向けて冷たい視線を飛ばし、時々チラチラと後ろを振り向く蒼士に気にしてない素振りで無視を決め込んだ。
今朝はあんなに情熱的に体を求めてきたくせに、なんて思わず朝の情事を思い出してぶるぶると頭を振った。
思わず陶酔してしまうほど自分の体が反応してくれたことにホッとしつつ、途中であっさり引き下がった蒼士に不満が募る。
勿論梨香子を想っての事だと分かっているから文句は言わなかったけども、やはり機嫌は治らなかった。

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