大人の女に手を出さないで下さい
「え?これ!アンティークの!」

蒼士が見せてくれたのは細い2本ラインのプラチナの装飾にパールとダイヤの宝石が隣り合うように付いているブローチだった。
これは初日に買付に行ったアンティークショップにあったもの。
いつの間にか蒼士は購入してたようだ。

「梨香子さんに似合うと思って」

そう言って蒼士はブローチを取り出すと梨香子の襟元に着けてあげた。
華奢なデザインでも存在感を放っていて梨香子の装いをより上品に仕上げてくれた。

「うん、今日のブルーのドレスによく似合う」

「で、でもこれ凄く高かったんじゃ…」

アワアワと胸元に着けられたブローチと蒼士の顔を交互に見る梨香子は嬉しいけどこんな高いものを贈られて困惑気味。
ショーケースにあったものはどれも日本円で3桁はくだらない高級品だったはず。

「隣り合う宝石をtoi et moi(トワエモア)あなたと私という意味があるそうだよ。俺と梨香子さん二人の愛の証ってことで二人の物だから気にしないで。梨香子さんに着けてもらいたいんだから」

「でも、こんな高級品着けてるだけで緊張しちゃう」

「大丈夫。失くしたらまた買ってあげるから」

「…もう、そんなこと絶対出来ない」

この御曹司は…。
時々忘れてしまう彼がお金持ちだってこと。
梨香子の金銭感覚からしたらやはり大金だし困惑するのも仕方がない。
しかしそんな気後れ感じさせないように冗談を言い無邪気に笑う蒼士に毒気を抜かれたように梨香子は笑った。

「ありがとう、蒼士くん。大切にする」

「うん」

でも、高価なものを買うときは必ず相談すること!と釘を刺すと蒼士は頭を掻き笑っていた。
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