大人の女に手を出さないで下さい
ハルちゃんが苦言を呈してくるとは珍しい。
このプティビルの1階フロアで蒼士と梨香子の関係を知らない者はいない。
蒼士の梨香子通いは誰が見ても明らかで、蒼士の容姿に沸き立っていた女性らも自分たちは見向きもされないと分かって今や生暖かい目で二人の行く末を見守ってるものが多い。
それでも本気で蒼士の事を好きになったと告白して玉砕した人もいるとか。
たまに年増のくせにとか、相手にされない蒼士が可哀そうとか何様のつもりと陰口を言われたりするけど梨香子はみな事実だからと気にしないようにしていた。
ハルちゃんも一時期は蒼士に好意を寄せていたが彼女が一番蒼士と梨香子のやり取りを目にしている。
「私は三雲副社長の好意を断る店長の気持ちが分かりません」と言いつつ自分は早々に蒼士の事を諦め二人の事は静観していた。
「三雲副社長が可哀そうです。店長を好きだと隠しもせずあんなに熱心にデートに誘ってるのに3回に1回くらいしか誘いに乗らないのに元倉さんはいいんですか?」
「ハルちゃん…よく知ってるわね」
蒼士とは店先で話をすることはあってもデートのお誘いはほとんどメールなのでハルちゃんが知る由もないはずなのになぜ知ってるのか?
その犯人にすぐ思い当たって彼のいる方向をじろりと睨んだ。
いつもなら元倉が来たら喜び勇んで話に加わってくるのだが、今日はトミちゃんは休みで静かなものだった。
「良いも悪いも無いわ。これはお仕事上のお付き合いだから。それにお互い異性とのお付き合いを断らない約束だから」
「何ですかそれ?」
ため息交じりに説明をするとハルちゃんは怪訝な顔で聞いて来た。