大人の女に手を出さないで下さい
「ああこれ?」

徐に手の甲を出し指輪を見せてにやりと笑う。

「これは梨香子との結婚指輪ですよ、いまだに付けてる女々しい男なんですよ私は」

「え?」

「何言ってんのよ、ただの女避けでしょ?そんなのつけてたって言い寄られるくせにいい加減やめてよねそれ付けるの」

蒼士が愕然としてる間に梨香子が冷たく突っ込む。
梨香子を見ればほんとに嫌そうな顔をしてる。

「まあ確かに、女避けでつけてますよ。だから未だに私は独身です」

梨香子の突っ込みもなんのその。速水はにっこりと蒼士に笑いかける。

「さっさと再婚すればいいのよ、彼女いるんでしょ?そんな指輪付けて彼女怒らないの?」

「残念ながらいないよ。唯一振り向いて欲しい人はいつまでたってもつれないからね」

「冗談は余所で言って」

何だこれは…。
蒼士は二人の掛け合いに胸が苦しくなる。
話を聞けば速水は未だに梨香子の事を愛しているとそう捉えられる。
蒼士はこの飄々としてる速水に梨香子をとられる気がして気が遠くなりそうだった。

「ただいま~ママ!お待ちかねのデザートが来たよ!」

テンション高く戻ってきた英梨紗の後ろからデザートをトレイに乗せたボーイが入ってきた。
ワクワク顔の英梨紗とは対照的に梨香子は憮然としたままだ。

「英梨紗にあげるわ、ママもうおなか一杯」

わ~いやったあ!と無邪気に笑う英梨紗を慈愛に満ちた微笑みで梨香子は見つめる。
そして、反対側でも速水は梨香子と英梨紗を愛おしげに見つめていた。
蒼士はふつふつと黒い物が込み上げるまま無意識に速水を睨んでいた。
そんな蒼士の視線に気づいた速水はやはり小さく微笑むばかり。
余裕綽々の態度にギリギリと歯噛みした。

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