大人の女に手を出さないで下さい
皆同じコース料理を頼み食事が運ばれ、他愛ない話をしていてもどことなく緊張感が漂う中、英梨紗はその空気をものともせず蒼士に話しかけた。
「蒼士くん知ってた?このレストランパパがママにプロポーズした思い出の場所なんだよ?」
「え?そうなんだ…」
だから今日は思い出の場所に連れて来てもらったの!と嬉しそうに言う英梨紗を余所に、蒼士はあまり聞きたくない情報だなと思わず顔を顰めた。梨香子を見ると彼女は憮然とした顔で頷く。
「ええそうね…」
「しかも丁度この部屋だったな」
速水はクスリと笑いワインを優雅に飲み干した。
まさか二人の馴れ初めの場所だったなんて知らなかったとはいえここを選んだのは一生の不覚。
しかも二人を出合わせてしまっただなんてこの先二人が復縁でもしてしまったらと思うと蒼士は不安で仕方がない。
英梨紗は蒼士の気持ちも気付かずお手洗い行ってきま~すと上機嫌で出て行った。
爆弾を落としていったのに何とも自由気ままな子である。
蒼士はヤケ酒と行きたいところだが、今日は車の為にミネラルウォーターをあおり我慢した。
でも待てよ、と、速水の手元を見て思い立つ。
「速水さんは今は再婚されてるんですよね?」
「え?」
速水に何を言ってるんだという顔をされて蒼士も驚く。
「その、指輪…」
速水の手元を見ながら言うと速水も気付いて自分の左手を見た。