このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~


あぁ。

やっぱり、彼は何も変わっていない。

まっすぐでちょっぴり強引な口説き文句が、いつも私の悩みを簡単に吹き飛ばしてしまうのだ。

ぎゅっ…、と指輪をはめた左手を包み込む。

ぽろぽろとこぼれる涙を堪えながら、私は、ぽつり、と呟いた。


「…好きです…」

「!」

「初めて会った時より、ずっと…」


彼の肩にもたれるように抱き寄せられ、そっ、と頭を撫でられる。優しい仕草に、心にぽっ、と明かりが灯った気がした。ぽんぽん、と泣いている子どもをあやすような彼の手つき。

律さんは、いつも私の側にいてくれた。私が諦めかけるたびに手を取って導いてくれる。

ーー私は、そんな律さんを幸せにしてあげたい。

彼が私でいいと言ってくれるなら、その言葉を大事に受け止めたい。


「律さん…」

「ん…?」

「…このお見合い、謹んでお受け致します…」

「…!」


律さんは、静かに笑って、そっ、と私と手を重ね合わせた。触れた指は熱くて、言葉よりも彼の気持ちが伝わってくる。


「…百合、おいで。」


不意に、そっ、と手招きをされ、近くに来るよう誘われる。

すでに隣にいるのだが、彼はあぐらをかいた上に私を座らせようとする。非現実なシチュエーションに、律さんもいつもより甘えモードだ。一方私も、“せっかくの旅行だし…”と素直に彼に流されてしまう。


…ぎゅっ…!


おずおずと彼の膝に座ると、お姫様抱っこのような体勢で抱き込まれた。そのまま後頭部を優しく包んでキスを落とす彼は、きっと少し酔っている。

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