このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~

彼の口から出た言葉に、思わず動きが止まる。


「“食べない”って、どういうことですか?」

「仕事をしていて、気づいたら夕方になっているんだ。」

「嘘ですよね…?お腹空かないんですか?」

「たまに栄養補助食品は食べるぞ。スティックタイプのものとか、ゼリーとか…。ちゃんと野菜ジュースも飲む。」


絶句して固まる私。

しれっ、としている彼は、自分の異常さに気づいていないようだ。

“栄養補助食品”は、あくまでも“補助”。それに、野菜ジュースだって、栄養バランスの取れた食事があってこそだ。毎日飲めば野菜が補えているというわけではない。


「さすがに、朝や夜は食べてますよね?」

「あぁ。出来合いのものを買って腹を満たす程度だけどな。」

「…!まさか、全部コンビニとかで済ませてるんじゃ…」

「いや、たまにデリバリーも頼むぞ?」

「そういう話じゃありません!」


(これだから“金持ち”は…っ!!栄養だって偏るだろうし、だいたい、毎日三食外食っていったいいくら無駄にしてるの?!)


トン、と箸を置く私。

ラーメンを手に、?、とこちらを見つめる彼に、私は目を細めて言い放った。


「ダメですよ、榛名さん。そんな生活続けていたら早死にします!せめて、夜ご飯くらいはしっかり作って食べないと。」


彼は大企業の副社長だし、ものすごく忙しくて、ご飯を食べるのも忘れるくらい仕事に追われる毎日だ。彼の生活のペースがあるのも分かる。

だが、このままではいつか倒れる。自分が不健康な生活を送っていることにさえ気付いていないなんて、大問題だ。

するとその時。彼は私の予想をはるかに超える一言を口にする。


「それなら、百合の手料理が食べたい。」

「はい?!!」

「百合が作ってくれるなら早く家に帰るし、料理も覚える。」

(何言ってんだ、このイケメン…っ?!)

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