このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~
**
「榛名さん。何ですか、これは。」
ーー午後七時。
退勤後、調理道具を菜箸しか持っていないという榛名さんをやや躊躇しつつ自宅に招いた私。彼が来るまでの数十分間の間に、出来るだけ部屋を片付けて洗濯物を取り込んだ。初めて弟以外の男の人を家に呼ぶ日にしては色気も雰囲気もないが、まあ仕方ない。
そして、やがて彼が到着し、早速料理に取り掛かろうかという頃、彼に頼んでおいた買い出しの袋を覗き込んだ私は思わず目を見開く。
「これ、どこの国のスパイスですか?全部外国語の表記ですが…。というより、スパイスなんて頼みましたっけ?」
「“お好みで香辛料”と言っていただろう?店員さんに勧められたから買ってみた。」
「な、なるほど…。…あと、野菜もすごく高そうですね。全部“無農薬”って書いてあります。」
「家の近くにはそれしか売ってなかった。」
(この人、普通のスーパー行ったことないのかな。たぶん、こんな桁が一つ違う商品扱ってるの、庶民はそうそう通えないレベルの食品量販店だよ。)
いつもより高級な肉と野菜。その他諸々の調味料をキッチンに並べた私に、腕まくりをした彼はふと尋ねた。
「それで?今日は何を作るんだ?」
「“カレー”です。」
「おぉ…」