このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~
彼は、じっ、と私を見つめた。
やがて、ふっ、と微笑んだ彼は、形の良い薄い唇をゆっくりと開く。
「少しは俺に興味が出てきたか?」
「…っ!」
「このまま同棲を始めるのも悪くはないだろ?」
「それとこれとは話が別です!」
思わず力強く反論する私。調子を取り戻した彼は、くすくすと楽しそうに笑っている。
ーー危ない。あやうく流されるところだった。
二人で過ごすこのひと時を、“楽しい”だなんて思い始めてしまった自分がいる。
私は、胸に芽生えかけた正体不明の感情を押し殺すように頭を振り、じろり、と警戒するような視線を彼に向けた。
「そろそろ、からかうのやめて下さい。私、恋愛に慣れてないので本気にしますよ。」
「からかってないって言っただろ?俺は本気で口説いてるんだ。」
「っ…!!出会って二日しか経ってないのに、信じられるわけないでしょう!」
と、その時。彼は、ぴくっ、と肩を震わせた。
その反応に思わず言葉を詰まらせた私に、榛名さんは、そっ、と続ける。
「“出会って二日”じゃない。」
「?」
「俺たちは、“十年以上前に”一度会ってるからな。」
(え…っ?)