このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~

想像以上の速さだ。

榛名さんは、私の承諾を得る前に彼女をアパートに向かわせていたらしい。夕食の出前よりも早い到着に目を丸くしていると、状況を掴めない私に日笠さんはニコリと笑う。


「あら、お出かけの準備がお済みでなかったのですね!突然押しかけて申し訳ございません。」

「あぁ、えっと、すみません…!…よく分からないんですが、今から急いで着替えます。あの、メイクにちょっと時間を頂いてもいいですか?お茶くらいならあるので…」

「いえいえ、お構いなく。それと、服もメイクも“向こう”にスタイリストがいますので、お任せいただいて大丈夫ですよ。貴重品だけ準備して頂ければ…」

「えっ?!」


ますます頭が混乱した。私の知らないところでとんでもないプロジェクトが始動しているのか?


「日笠さん。一つ聞きたいんですが…今からどこに向かう予定なんですか?」


すると、動揺を必死で抑えていた私の問いに返ってきたのは、予想をはるかに超えた日笠さんの一言だった。


「“東京湾”です。」

「?!」

「奥さまには、今夜開催されるハルナホールディングス創立記念の“クルージングパーティー”に参加していただきます。」

「“くるーじんぐぱーてぃー”?!!!」


家賃三万のアパートに響いたその絶叫は、この場で聞こえることが不自然すぎるほど、現実とは程遠いセレブな響きであった。

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