このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~
今、私が榛名さんと共にパーティーに出たなら、良くも悪くも、情報はすぐに広まるだろう。
正式な婚約などは結んでいないものの、逃げ場がなくなる。このお見合いを断れば榛名さんにも傷がつくし、最悪の場合ハルナホールディングスの沽券に関わるのだ。
もはや、彼は私を逃す気なんてさらさらないのかもしれないが。
…と、その時。榛名さんはため息混じりに低く唸る。
「ーー仕方ない。この手だけは使いたくなかったが…」
「?」
次の瞬間。
彼は切れ長の瞳をわずかに細め、“最強の脅し文句”を言い放ったのだ。
「もし、この提案を呑んでくれるなら、百合が俺を置いてホテルから逃げ出した一件は水に流してやる。」
「!!!」
それは私たちが初めて会った“あの”夜。
タチの悪い常連客“今井”を振り切る為に二人で入った“大人のホテル”。しかし私は、助けてくれたお礼をしっかり伝えるどころか、彼がシャワーを浴びている間に逃げ出したのだ。
よく考えてみれば、連れ込まれたとは言えど、自分も一晩泊まったくせに清算をしてくれたのは榛名さん。おまけに、あのホテルはジャグジーに薔薇の花びら付きの高級ホテル。一泊の値段は、きっと目玉が飛び出るほどだろう。
ーーしかも、今私が身につけているドレスも装飾品も、メイクや髪のセットにかかったお金も、全て榛名さんのポケットマネーなのだ。
(…っ!帰ります、なんて言えない…!!)
ーーこうして私は彼の押しに負け、うなだれるように首を縦に振ったのだった。