このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~
「ーー品がないな。見苦しいにも程がある。」
(え…っ?)
耳に届いた艶のある低い声。
すっ!と、流れるように私の前に現れた背中は、質の良いダークスーツを着こなした一人の男性だった。思いもよらない第三者の介入に、呼吸が止まる。
男性は、動揺する真人に向かって低く続けた。
「今夜のパーティーをナンパ目的のクルージングと勘違いしているようならさっさと降りろ。ーーここはお前のような男が来る場所ではない。」
彼の口から放たれた言葉は甘い声色ながらも容赦なく、真人も、彼のあまりの威圧感に高ぶっていた怒りが一気に鎮火したようだ。
やがて真人は、チッ、と舌打ちを残し、その場から去っていく。
(…助かった…?)
叔父の背中が人混みに完全に消えた瞬間、フッ、と体の力が抜けた。極度の緊張から解き放たれた私は、思わず深く息を吸う。
「…大丈夫か?」
ーーすっきりとした目元に長いまつ毛。見つめられただけで心臓が高鳴るほどの引力のある瞳。どこかのモデルかと言わんばかりの整った外見に、思わず言葉を失う。
私を気遣うように顔を覗き込んだ彼は、やがて静かにしゃがみこみ、床に落ちていたネックレスを拾った。
「…はい。壊れているけど。」
「…っ、あ、ありがとうございます…」