このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~

差し出されたネックレスに、はっ!と弾かれたように頭を下げた私。
先ほどの威圧するような表情とは別人の柔らかな笑みを浮かべた彼は、それ以上は何も言わずにこちらを見つめている。


「あの…っ、ご迷惑をおかけしてすみません。自分ではどうしようも出来なくて…。お陰で助かりました。」

「いや、気にしないでいい。変な男に絡まれて怖かっただろう。怪我はないか?」

「はい。…すみません、実は、あの人私の知り合いなんです。」

「そうだったのか。…君、困ってそうだったから。勝手に割り込んですまなかった。」

「こっ、こちらこそ…!巻き込んでしまってすみません…!」


物腰柔らかな彼。

しかし、纏う雰囲気は明らかに一般人ではなく、その立ち振る舞いは品があり、大人の色気を帯びたカリスマオーラをひしひしと感じる。

そういえば、今夜のクルージングパーティーにはハルナホールディングスの傘下の会社や名のある財閥のセレブが集まると榛名さんが言っていた。傘下の会社には、楽器メーカーだけでなく芸能プロダクションやアイドル事務所などのエンターテイメント企業もある。


(この人、芸能人なのかな…?)

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