このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~

ぎこちなく、ちらちらと見つめていると、やがて、彼は、そっ、と顎に手を当ててぽつり、と私に声をかける。


「…君、こういうパーティー、初めて?」

「えっ?」

「いや。あまり見ない顔だから。」


ぎくり、とその指摘に動揺が走った。

この華のある彼は、やはりハルナホールディングスの関係者のようだ。見慣れないゲストに目を細めている。


「ええっと…、はい。初めて招待してもらったんですが、あまり慣れてなくて…」

「ふぅん…。“招待”ってことは、連れがいるの?女の子は一人にならない方がいい。さっきみたいな“ああいうの”もいるからな。」


その“連れ”が、ハルナホールディングスの副社長、榛名 律であると知ったら、この人はどんな顔をするのだろう。“婚約者のフリをするために連れてこられた”なんて、口が裂けても言えない。


「君、名前は?」

「…あ、逢坂百合です。すみません、自己紹介もせずに。」


ぺこり、と救世主に頭を下げた私。

と、その時。私の名前を聞いた彼が、わずかに目を見開いた。数秒その場の空気が変わる。


(…?)

< 63 / 168 >

この作品をシェア

pagetop