このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~
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「ーーはい。せっかくだから飲めば?ジュースだけど。」
「ありがとうございます…!」
トン、と綺麗なグラスがテーブルに置かれた。
デッキの階段を降り、案内されたのは、シックで落ち着いた雰囲気のバーだった。装飾から何から全て上品で、場慣れしていない私はソワソワして落ち着かない。エスコート慣れしているように二人がけのテーブルの椅子を引いた彼に促されるまま席に着く。
緊張を誤魔化すようにグラスに口をつけると、桃のような果実の甘さが口いっぱいに広がった。
「わ…、美味しい…」
「それは良かった。」
にこり、と微笑むソウさん。
ちらり、と視線をやると、彼は長い指でグラスの縁をなぞっている。…やはり、見惚れるほど顔面が良い。これほどまでにお酒が似合う人がいるだろうかと思うくらい、その色気を帯びた姿は絵になっていた。真紅の液体が、彼のグラスの中で丸く削られた氷を濡らしている。
「ソウさんは何を飲んでいるんですか?」
「アップルワインだよ。サングリアに近いけど。飲んでみる?」
「あっ、いえ!私、お酒あまり強くないので…」
度数の高いワインを涼しい顔で口にする彼は、私の言葉に「ふぅん。」と小さく相槌を打つ。
こくり、と彼の喉仏が上下する度に、どこを見ていいのか分からず私は視線を彷徨わせた。