このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~

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「ーー…ん…」


ぱちり。

ゆっくりと重い瞼を開けると、視界に映ったのは見慣れない天蓋だった。むくり、と起き上がると、豪華で細やかな装飾が施されたブランケットが、ぱさり、と肩から落ちた。シルクのシーツは驚くほど肌触りがいい。


(…?ここ、どこ…?)


微かに聞こえる波の音と、窓から見える漆黒の海。どうやら、ここは船内の一室のようだ。辺りに人の気配はない。ドレスを着たままベッドに横たわっている経緯が思い出せず、私は額に手を当てる。


(…私、さっきまでバーにいたような…?どうしてこんな所に…?)


ーータッタッタッ…


その時。船室の扉の向こうから、駆け足で近づいてくる足音が聞こえた。それはまっすぐこちらへ向かってきているようで、だんだん音が大きくなる。

…と、次の瞬間。

半ば蹴破るように、バン!と部屋の扉が開いた。思わずびくっ!として視線をやると、廊下に見えたのは息の上がった榛名さんの姿。

ぱちっ!と重なる視線。

すると、切れ長の瞳が私を映すや否や、彼は言葉もなく私に駆け寄り手を伸ばした。


ーーぎゅうっ…!!


(!)


突然抱きしめられる体。

呼吸が止まる。

シャツ越しの体温も、首元に感じる乱れた呼吸も、微かに香る彼の香水も、全てが私の思考を飲み込んだ。

何も、考えられない。


「…は、るな、さん…?」

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