このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~
「あの、榛名さん。…私、単に介抱されただけかもしれません。」
「…!」
「お酒を飲んだつもりはなかったのですが、ちょうど知り合いになった方とバーでドリンクを飲んでいたら急に眠たくなって…。気付いたらここにいたんです。」
その言葉に顔をしかめた彼。
それは、明らかな“疑念”の表情である。
「ソフトドリンクで眠くなるわけないだろう。何らかの意図があって酒を飲まされたに決まってる。…“知り合い”ってのは何だ?そいつは、男なんだろう?」
「確かに、榛名さんの言い分も分かりますが…。彼は私がトラブルに巻き込まれたところを助けてくれたんです。それに、穏やかで紳士的でしたし、とても下心があったようには思えません。…相手に私を選ぶほど、女性に困っているようにも見えませんでしたし…」
「そういう問題じゃない。」
はぁ…、と息を吐く彼。
熱のこもった切れ長の瞳が、焦ったいように私を見つめる。
「ーー百合。何度も言うが、お前は自分のことを過小評価しすぎだ。誰が何と言おうと、百合は可愛い。そんな無防備でいられたら、俺の身がもたな……」
ーーと。ド直球の口説き文句が口から飛び出し始めたその時。ぴたり、と彼の声が止まった。
はっ、と何かに気付いたように見開かれる切れ長の瞳。
甘いセリフが続くと思っていた私だが、彼は顔色を変えて、すっ、と私の首元に顔をうずめた。
「ーー“アーク・ロイヤル”…?」
(え…?)