人生の続きを聖女として始めます
「陛下!?どうしてこんな所に!?御用があれば伺いますのに……あ、ジュリ様とはお会いに?」

「は?いや、ジュリはオレに会いに行ったのか?」

「ええ。先ほど……あー、入れ違いになりましたかな」

「それで……ジュリがオレを訪ねた件はあれか?」

オレは小声で言った。
レーヴェに聞かれては不味いと思ったのだ。

「そうです!ビクトリアが懐妊したという……んぐっ!」

オレはリブラの口を必死で押さえ込んだ。
バカなのか?
折角聞こえないようにしたのにこれでは……ああ、それみろ、レーヴェがこちらを凝視しているぞ?
ん?何故微笑む?そして、何故こっちに歩いてくるんだ!?

「父上様。僕は全て知っています。そして、父上様が愚かなことをしないことも知っていますから」

やって来たレーヴェは、天使のように微笑んだ。

「そうか……うん。そうだ、愚かなことはしていない!それは真実だ!」

「では、早くお母様に伝えなくては!入れ違いになったのなら、ビクトリア様の方へいったのかもしれません!」

「なっ!?なぜ……」

「両方の意見を聞くのがいいと、僕が提案してしまいました……ごめんなさい」

入れ違いになったのを自分のせいだと思ったのか?
レーヴェはすこし俯いた。

「お前は悪くないぞ。オレが悪いのだ」

そう言うと、リブラとロシュがうんうんと頷く。
……見てろよ、将軍の報酬を減らして、神殿部の経費も削ってやる。

「心配するな、ジュリとちゃんと話すから。お前はここで待っていろ」

「はい!お願いします」

レーヴェは顔をあげ笑顔を取り戻した。
さて、北館へ行ったとなると急がねばならない。
エスコルピオがついているんだろうが、あそこは敵地だからな。
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