人生の続きを聖女として始めます
「リ、リブラ様?あの、で、殿下がお越しでございますが……」

「ふぇっ!?」

リブラはまた飛び上がって驚いた。
小動物のようだな、と思っていたけど、こうなるとほんとにウサギかリスみたい。
なんて、私は呑気に考えていた。

「聖女様にお会いしたいそうです」

ヴィスは早口で続ける。
きっと、外でせかされてるんだな。

「…………わかった。入って頂いて下さい」

少し威厳を取り戻した大神官(小動物)リブラは颯爽と立ち上がり、パンパンとローブを叩くと、扉付近で直立不動になった。
手招きをされた私も、同じ様に直立不動の姿勢をとる。
ヴィスが先頭に立って中に入り、次に小さな男の子が入ってきた。
これが、王子様か。
赤茶色の髪は、赤よりも茶色味が強く飴色に近い。
ちらりとこちらを見てニッコリと微笑んだその瞳は、見事な金色で一目で王族だとわかった。
まるで絵本の中から抜け出たような完璧な王子様に私の目は釘付けだ。

「ご機嫌麗しゅうございます殿下。このようなところにおいでにならなくても、こちらから出向きましたものを……」

リブラが平身低頭で王子を椅子に促し、そのすぐ隣の椅子に私を呼んだ。

「今ね、エスコルピオが教えてくれたんだ!聖女様が来たって!だから僕すぐに会いたくて来ちゃった……あなたが聖女様ですね?」

王子はキラキラした目で私を見た。
好奇心なのか、崇拝なのか?
彼は何か『すごいもの』を見るような目で見てくる。
現代で言えば、戦隊もののヒーローとかと同じ扱いなのかな?

「ええと。はい。ジュリと言います。殿下」

私がそう言うと王子様は、拗ねたように口を尖らせて言った。

「殿下だなんて……僕の名前はレーヴェ!ジュリ様もそう呼んで下さいね!」

「レーヴェですか!いい名前ですね!……ふぅーん、レーヴェ……レーヴェ?レーーーヴェ!?」

私のすっとんきょうな叫び声は、神殿部寄宿舎中にこだまとなって響き渡った。
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